第54章

藤田と夏目海人も島を離れてしばらく経ち、予定していた用事も済ませていた。

今日、藤田は夏目海人を連れて丹羽光世に別れの挨拶に来たのだ。

「うん、午後には出発する」藤田は夏目海人を一瞥してから丹羽光世に言った。「今回島に戻ったら、次にいつ出てこられるかわからない。夏目海人が君が入院したと聞いて、会いに行くとうるさかったんだ」

夏目海人は自分の本心を暴かれ、口をとがらせた。「そんなことないよ。わざわざ彼に会いに来たわけじゃない。ただ、私たちの約束を忘れないように言いに来ただけだ」

丹羽光世は口元を緩めた。「君が島に残した私の記録をひとつでも破ったら、私が直接島に行ってやる。そして一つ約束...

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